世界最速ヒットした仏ドラマ「ルパン」 主演俳優がファンだったのは漫画「ルパン三世」?……ではない
※解決篇あります!
Netflixドラマ『LUPIN/ルパン』
1,『LUPIN』パート3予告来た!
オマール・シーの『LUPIN/ルパン』パート3の予告、来ましたね!
しかもさっそく「黒真珠」という原典キーワードが!
原典アルセーヌ・ルパンガチ勢であり、そして原典ルパンへのリスペクト溢れるオマール・ルパン/アサン・ディオップにノックアウトさせられた身としては、ワクワクせざるを得ない!
2,オマールがファンだったのは漫画「ルパン三世」ではない
さて。パート3が始まるのは嬉しいのですが……。
オマール・シーのルパン絡みでひとつ愚痴を書かせて下さい。
2021年に、オマール・シーの『LUPIN』が世界的にヒット。日本でもいろんなライターさんが記事を書きましたが、中にこんな記事が……。
【仏ドラマ「ルパン」世界最速ヒットした最大の理由 主演俳優は漫画「ルパン三世」のファンだった?】
記事から引用します。
でもですね、これ、オマール・シーが影響を受けた日本の漫画の「ルパン」って、ルパン三世じゃなくて、僕の『怪盗ルパン伝アバンチュリエ(仏題:ARSÈNE LUPIN)』の事なんです。
以下はこのキャプの元動画です。これの5分あたりから、参照された映画、漫画など挙げられています。5分40秒頃からアバンチュリエの画像が。『ルパン三世』も、『カリオストロの城』もありません。あくまで「アルセーヌ・ルパン」関連の映像。
追記:上の動画、フランスで長く暮らしていた方に見てもらって、ニュアンス込みで翻訳してもらいましたー。
「マンガでルパンを知った」は確実に言ってます。司会者とオマールが共通で「マンガ」って言ってる後ろでアバンチュリエの映像が流れるのでマンガ=アバンチュリエです。
だそうです!
ちなみに同じことを、別のフランスの方も別の場で動画見て言ってました。
ちなみに機械翻訳とか一部の訳の「若い時」「子供の時」なんだけど、どうやらニュアンスとしてはここ、
会話の流れから、「もっと前」ってニュアンスが自然らしいです。
「この話が来る前、くらいの感じでも良いと思います。」
だそうです! (追記終わり。)
アバンチュリエとルパン三世で日本での認知度が段違いなのはわかってますので「ルパン三世」と考えてしまうのは無理もないとも思うし、ライターさんにどこまで調査義務があるのかわからないのでこの長谷川さんというライターを非難する気は無いのですが……。
しかし、ただでさえルパン三世が強いのに、アバンチュリエの功績までルパン三世の功績にされてしまうのはさすがに理不尽だし、悔しいです。そんなことをされたらいつまでたっても勝てない。「ルパン三世だけじゃなく、ルブランの原典のアルセーヌ・ルパンの面白さを知ってもらいたい」という志も、空しくルパン三世に吸収されてしまう。
なので、フランスでのアバンチュリエの認知度を、ライターの中で隠然とでもいいので広めて欲しいと思いました。これを読んだライターさま、メディア関係の皆さま、よろしければ。
10月からのオマール・シーの『LUPIN』のパート3で、また記事がたくさん書かれると思うんですが、今後はこういうことが無いようにしてもらいたい。責める気は無いんだけど、日本での認知度もっと上げたいので、拡散してくれるとちょっと嬉しいです。
そしてよろしければ、アバンチュリエのフランスでの認知度を、取材をして記事にして頂けると!(この記者さんやこの媒体の訂正的な記事でも良いし、違う方、違う媒体でも良いです)
この記事が出た時は、「あれ?これアバンチュリエのことのはずでは?」とは思ったものの、当時は確認ができなかったんですよね。 数日前に、日本に遊びに来ていたフランスの出版社の方と飲んで、アバンチュリエの事だと確認しました。なので、正当な権利として、指摘しておこうと思います。
まあほんと、非難する気は無いんです。でもそれはともかく、ジャパン漫画海外ネタとして、「フランスでオマール・シーが読んでいた日本発のアルセーヌ・ルパン漫画」「フランスで現在大ヒット」というのはニュースバリューがありません?(笑) このタイミングでどこかメジャーな記事サイトに取材受けたいなーとは。
補足情報
1,時系列
一応、以下に時系列を記しておきます。
2011年 講談社イブニングで森田崇『アバンチュリエ 新訳アルセーヌ・ルパン』連載開始
2012年 イブニングでの連載終了(全5巻)、当時は珍しかったTwitterでの移籍募集によりヒーローズに移籍決定
2013年 ヒーローズにて『怪盗ルパン伝アバンチュリエ』に改題して移籍連載開始
2016年 『怪盗ルパン伝アバンチュリエ』ヒーローズ連載終了(登場編上下巻+5巻)
さらなる作品継続を模索するため同年森田主導によるプロジェクト「ルパン帝国再誕計画」発足。2015年~2019年 ヒーローズ経由で『怪盗ルパン伝アバンチュリエ』後半の5巻のみ(ヒーローズ版のみ)フランスの出版社のKUROKAWAからフランス版が発売される(仏題『ARSÈNE LUPIN L'AVENTURIER』)
この頃フランスで「Japan Expo」少年部門ノミネート
フランスの中高生が選ぶ日本の漫画賞「Manga WA」にもノミネート
おそらくこの頃オマールが読む
2018年 日本にてKDP出版による電子書籍(Kindle) 『怪盗ルパン伝アバンチュリエ【再誕計画版】』全10巻発売(以下続刊)。講談社版・ヒーローズ版を原典発表順に再編集し、基盤シリーズに
2019年頃 ヒーローズと森田の契約が切れたことにより、ヒーローズ経由のフランス版アバンチュリエが一時絶版に
2019年 「ルパン帝国再誕計画」とHISで「ルパン聖地巡礼ツアー」を興して、10人以上のアルセーヌ・ルパンファンと、そして『VSルパン』さいとうちほ先生、『ルパン・エチュード』岩崎陽子先生(どちらもアルセーヌ・ルパンの漫画)と一緒にパリ・エトルタを訪問。エトルタ市長やルパンファンクラブ(ルパン友の会/AAAL)に歓迎されてテレビ取材も入る。エトルタのクロ・ルパン(ルパン記念館)でサイン会も
2020年 Kindleにて『怪盗ルパン伝アバンチュリエ【単話版】』新章『813』編連載開始
2021年 オマール・シーのネットフリックス『LUPIN』世界的大ヒット
2022年 森田とKUROKAWAが直接契約し、前半の講談社版も含む『怪盗ルパン伝アバンチュリエ【再誕計画版】』全10巻が改めて『ARSÈNE LUPIN』のタイトルでフランスで発売、大ヒット。
2023年3~4月 森田、リヨンで行われるヨーロッパの伝統的文学イベント『QUAIS DU POLAR』に漫画家として初めて招待される
2023年 『LUPIN』パート3 10月スタート(イマココ)
という流れです。さきほどの動画に映ってるアバンチュリエは2013~2016年に出た旧版ですね。KUROKAWAさんが再契約に熱心になってくれたのもこの2013年~の版が売れたからなので、多分あのタイミングでオマールが読んでくれたんだと思います。
2,フランスでのルパン三世は『泥棒探偵エドガー』だった
フランスではルパン三世は長い間『泥棒探偵エドガー』というタイトルで放映されていました。なので、フランスではエドガー=ルパンだという知識は(日本アニメマニア以外には)一般的にはあまり無いようなんですよね。 近年のパート4か5あたりの時に、初めてフランスでルパン三世の名前が解禁されたはずなので、もしかしたら事情も変わってきているかもしれませんが。(ここはソースがサッと見つからなかったんで、アニメ界の識者の知識を借りたい。ルパン三世と次元とモン・サン・ミッシェルの絵が掲げられてて、「放蕩息子が帰還を許される」みたいなフランス語の記事があった覚えがあります(孫だけどw)。日本でも翻訳された記事あったと思ったんだけど……当時は自然に目に入ったんだけどなあ。探しても見つからない……。)
追記:読者の方から情報ご提供いただきました!
『ルパン三世』の名前が解禁したのは2017年で、しかももしかしたらこれ、JAPAN EXPO 2017 限定かも。(この辺はまた確証無し)
さて、上でも触れたフランス・リヨンの文学イベント『QUAIS DU POLAR』に招待された時、映画発祥の地のリュミエール美術館で『カリオストロの城』の前説をやってきたんですが、この作品に関してもご覧の通り『ルパン三世』ってタイトルに入ってないんですよね。
前日までにスピーチの原稿を作るために通訳の方に「フランスでのカリオストロの城の知名度はどのくらいですか?」と聞いたら、「ほとんど知られてない」とのこと。
あ、もちろん「宮崎駿監督」は巨匠として知られていますよ(笑)。
でも『カリオストロの城』は日本人が思っているほど知られていない。おそらくイベントでは「巨匠の知られざる初期作」というニュアンスでの紹介だったのかなと。 もしくはアルセーヌ・ルパンを描いている森田崇がゲストだからという前提もあると思います。(事前に僕が紹介したいノワール映画を聞かれたので。)
このくらいの知名度だから、先ほどのリンク先の記事での「オマールがカリオストロの城を参考に……」というのはおそらく無いんですよね。
追記:これも友人から情報提供されました。
フランスの『カリオストロの城』初上映は2019年。
タイトルに『ルパン三世』の文字は無し。
でも逆にこのタイミングだと、オマールが撮影前に見た可能性はゼロじゃないかも。まあ何の根拠もなくて、「莫須有(ばくすゆう/あったかもしれない)」レベルだけど(笑)。
それに何より、キャラが違いすぎる。
Netflixの『LUPIN』は、見た時に、「ちゃんと原典のルパンのトリックやソウルを理解してる。(ルパン三世と違って)さすが本国……」と思いましたもん。
いや、ルパン三世も僕ももちろん大好きですよ。大好きですが、あれはドタバタの要素があったりと違う魅力で、「オマールが伝統的なルパンを理解するために参考にした」と言うにはキャラが違いすぎる。
反して、憚りながらですが、拙作『怪盗ルパン伝アバンチュリエ(ARSÈNE LUPIN)』は、上記のフランス旅行の中で10数回にわたる雑誌やメディアのインタビューを受けたのですが、その内容の多くが、「遠い日本の漫画家が、なぜそんなにアルセーヌ・ルパンを深く理解して拘ってくれているのか」でした。自分で言うのは何ですが、どちらを指しているのか明らかだと思います。
もしかしたら僕がリンクした以外のどこかのインタビューでオマールがルパン三世に言及したものがあるのかもしれませんが、「原作以上に『ルパン』というキャラクター性を深く理解したのは日本のマンガだった」のがルパン三世を指すというのはさすがに無理がありすぎます。
そこは「原典ルパンの忠実な漫画」という事をフランス本国に認めてもらえている『怪盗ルパン伝アバンチュリエ』の功績だという事は、日本の皆様、特にライターやメディア、マスコミの方々にも知って欲しいものです。今回のパート3のレビューで訂正して欲しいですね。
単純に、「遠いフランスの地でこんなに頑張っている、知られざる日本の漫画があるのだ」って切り口でもニュースバリューある気がします。僕は別に叩くのが目的ではありません。そうではなく、この機会にフランス本国の人にも評価されているアルセーヌ・ルパンの漫画が、いろいろな困難を乗り越えて今も連載中だという事を、知ってもらいたい。この記者さんでも他の記者さんでも、他のメディアの方でも是非! 取材お受けしますよ!
そういえば、オマール・シーの『LUPIN』のシーズン1の時に僕もレビューを書きましたので、よろしければ読んでみてください。オマール『LUPIN』にちりばめられている「原典アルセーヌ・ルパンネタ」の解説付き!
フランスでの認知度参考画像
以下、『怪盗ルパン伝アバンチュリエ』のフランスでの認知度の参考になる画像やリンクをいくつか置いておきます。
1,2019年ルパン聖地巡礼ツアーでのフランスのテレビ局の取材
2,2023年『QUAIS DU POLAR』とエトルタのテレビ局取材
3,同『QUAIS DU POLAR』/エトルタ/パリ訪問写真
なんというか、『ルパン帝国再誕計画』を立ち上げて従来の漫画出版社の雑誌連載形式に頼らずに「アルセーヌ・ルパン」原典の続きを描いていこうと決意した時からの僕の戦略や勝算って、フランス展開からの凱旋帰国みたいなのは最初からひとつのカギなんですよ。なのにそれが全部、帰国のルートで『ルパン三世』に回収されてしまうとしたら、それはちょっと洒落にならないですね。なのでここで釘を刺しておきたく存じます。またそれは、「ルパン三世も面白いけど、アルセーヌ・ルパン原典の面白さにも注目してもらいたい」という『怪盗ルパン伝アバンチュリエ』の目的にとっても困った事です。
ですので、よろしければ拡散をお願いします!
おわりに
『怪盗ルパン伝アバンチュリエ(ARSÈNE LUPIN)』読んで!
それと、この記事で初めて興味を持ってくださった方。
『怪盗ルパン伝アバンチュリエ』はアルセーヌ・ルパンを原典にできるだけ忠実に漫画化した作品で、上記の通りフランス本国でも大きく評価されております。よろしければ、この機会に是非!
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