オルフェーブル河岸36――パリ警視庁国家警察部
『ルパン帝国再誕計画』を立ち上げて著者の直接配信として『怪盗ルパン伝アバンチュリエ【再誕計画版】』をkindleで配信した時に、それまでの講談社やヒーローズから出ていた紙版から、いくつか大きな修正を施しました。
大きなバージョンアップとしては、上記の広告の通り「描き下ろしカラーオープニング」や「総ルビ」、「各話終わりの書き下ろしコラム」、そして「よりルブランの原作発表順に近い形の再編集」「カラーページ収録」などですが、その他にも、内容でいくつか修正した点があります。その中でも大きなものが、この「オルフェーブル河岸36――パリ警視庁国家警察部の描写」です。
パリ警視庁国家警察部は、警視庁の中でも特に刑事事件を扱う部署。あのガニマール警部がいるところです。ルパン譚の中でも「オルフェーブル河岸」と言えばそのまま国家警察部の事を指します。ホームズ譚における「スコットランド・ヤード」みたいなものですね。
地図で言うと、ここ。
パリの中心にして発祥の地、シテ島の中にあります。(ちなみにシテ島とは「シティ」の語源だそうです。)シテ島内には他に、ノートルダム大聖堂や、マリー=アントワネットが監禁されていたコンシェルジュリー要塞も見えますね。
島の中央辺りに「プレフェクチュール ド ポリス」と見えるのが、パリ警視庁です。僕は最初、ここをモデルに作画してしまっていました。
間違っているというわけではないんですが、やはりより詳しく見ていくと、サン・ミッシェル橋を挟んだ向こうにちゃんと「オルフェーブル通り」があります。地図上では「州警察」とあったので当時悩んだ末に候補から外してしまったんですが、やはり「国家警察部」はこちらが正しかったんですね。
交通科なども含めた全般的な警察業務として「パリ警視庁」という組織があり、その中で特に刑事事件を扱うのがオルフェーブル河岸――「国家警察部」。その長がガニマール警部の上司、国家警察部長デュドゥイ氏であり、『813』で登場する有名なルノルマン氏であるわけです。
国家警察部はなぜパリ警視庁本部と切り離されているのか。
これは、隣りにある「パレ・ド・ジュスティス」――ルパンの裁判の舞台にもなった、フランス最高裁判所――との連絡や囚人、被告人の移動を容易にするという意図があるようです。その結果本部から独立した場所に位置し、「オルフェーブル河岸」という通りの名前もそのまま「国家警察部」の異名になったんですね。
よろしければクリックして航空写真や3Dでも見てみて下さい。こうやって見ると、真田丸じゃありませんが、パリ警視庁本部から独立した出城のようにも見えます。デュドゥイ氏やルノルマン氏は、その出城の主の感がありますね。地理がわかってくるとよりいろいろなものが見えてきて、非常に興味深いです。
『怪盗ルパン伝アバンチュリエ【再誕計画版】』では、国家警察部の位置の修正に伴って、「ルパンの脱獄コース」にも手を加えました。囚人移送馬車――通称「サラダ籠」――が出入りできそうな出入り口も見つかり、ルートがよりスッキリしました。ぜひ、漫画を片手に地図を見て、「ラ・サンテ刑務所」までのルパンの脱獄コースをたどってみて下さい。
修正点としては他に、『金髪婦人』でのデタンジュ邸の円形図書室の位置や、ティベルメニル城の地図上の位置などを修正しました。
デタンジュ邸に関してはネタバレが致命的なコマなので、画像掲載は自粛します。旧単行本(講談社版5巻、ヒーローズ版登場編下巻)などお持ちの方は、是非比べてお確かめを。
デタンジュ邸は、今回の再調査で位置もほぼ特定できて、しかもGoogle Mapの上空からの3Dで見たら円形図書室らしきものも確認できてゾクッとしましたね…。クロチルドの部屋がありそうな「離れ」もわかった。
ここも広場や通りの名前がルパン譚当時から変わっているので難易度が高かったのですが、これは『金髪婦人』執筆当時になんとか正解にたどり着いておりました。ただ、当時は3Dがなかったので、「円形図書室」までは特定できてなかったんですよね。今回それらしきものの位置まで確認できて、非常に満足しております。ご興味のある方は是非上記地図をクリックして、更新した漫画版と3D地図を比べあわせてみて下さい。
大きな修正点、もうひとつ。
【再誕計画版】第3巻『遅かりしHerlock Sholmès』の舞台、ティベルメニル城の地図も、モデルとなったであろう地名がわかったので、修正いたしました。これは『奇巌城』のワンシーンでもでてくるので、そちらも修正してあります。(そちらの画像はネタバレなので伏せます)
こちらもディエップにより近くなり、「ドヴァンヌ氏がディエップにネリー嬢を迎えに行く」という作中のシーンがスッキリしました。わかってみると明らかにこの位置が正しいんですよね。
他にも細かいところをいろいろ修正し、より原作の意図に近い描写に近づけたと自負しております。
『怪盗ルパン伝アバンチュリエ』は、一面ではモーリス・ルブランの原作「アルセーヌ・ルパン」の研究書としても胸を張れるくらい、原作の描写にこだわって描いております。ディープなルパンファンはそのへんも読み込んでくださると、より楽しめると思います。
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